スプリングフィールド造兵廠、最後の傑作
こんにちは、今年の我が家の恵方巻きはトルティーヤの恵方巻きという、季節感も風情もへったくれも無い太巻きでしたが、好きなのでおいしく頂いたキヨミズです。 ちょっと考えた末、メキシコ・シティの方に向けて食べてみましたが、良かったのかな・・・
今回取り上げますのはこちら、M14 ライフルです。
制式名称“United States Rifle, Caliber 7.62 mm, M14”は、NATO軍共通の小火器弾薬に制定された7.62x51mm(7.62mmNATO)弾に対応する新小銃として、1957年に採用されました。 設計は伝統あるスプリングフィールド造兵廠。同造兵廠は戦中より様々な試作を重ねており、完成したばかりの“FN FAL”とも比較した結果、M1ガーランドからの発展試作型である“T44”を、M14として採用します。
この新小銃の計画は元来、小銃としてだけではなく、軽機関銃や短機関銃等の分隊小火器を一手に引き受ける万能小銃とする欲張った仕様でした。 しかし、それらの構想はドイツの7.92mmクルツ弾やソ連の7.62x39mm等のような、短縮型ライフル弾を用いるのではあれば現実的でしたが、フルサイズ小銃弾とも言える7.62mmNATO弾では大きな無理がありました。 また旧来型の小銃であるM1ガーランドの設計を色濃く受け継いでいたM14は、同世代に開発された各国の新小銃に比べると保守的で、M1ガーランドに比べシェイプ・アップされたとはいえ、その寸法や重量は旧来の小銃に近いものでした。
アメリカもそれらの問題は認識していたようですが、製造から兵站までに至る各種コスト、保守的であるがゆえの高い信頼性、日増しに緊張が高まる欧州や中東で予想される“次の戦争”を見据えての再軍備の必要性、そして超大国となったアメリカ・ファースト!な政治的思惑等々が入り乱れた結果、7.62mmNATO弾とM14ライフル(と、M60汎用機関銃)の採用となりました。
しかし予想とは異なり、米軍の新たな戦場は、関与を深めていた南ベトナムのジャングル地帯となりました。 ゲリラ戦を主体とする共産勢力を追って侵入したジャングルで、M14はガーランド譲りのタフネスさを発揮しましたが、そのサイズにより取り回しが利かず、多発した不意の遭遇戦に必要なフルオート射撃が困難なM14は苦戦を強いられます。 また極端に高い湿度により木製ストックは短期間で膨張し、射撃精度に悪影響を及ぼしました。 そこで直銃床、ピストル・グリップ、樹脂製のストックなど改修型も造られましたが根本的な解決には至らず、1963年に生産中止が決定。 1964年には制式小銃の座を、新しい小口径高速弾を使用するM16ライフルへと譲ったのでした。
不勉強を承知ながら推測ですが、熱帯での小火器に関する知見はOSSや海兵隊、SOGなんかからたっぷり報告が上がってたと思うんですよね…当時のアメリカは、陸海空に宇宙まで引き受けようとしていた、それマッハだメガトンだと躍起になっていましたから、歩兵の多少の苦労ぐらいは差し置いての見切り発車だったのかもしれません・・・
このような用兵上の食い違いにより、短期間で現役を退いたM14でしたが、1970年頃まで欧州駐屯部隊や米国内での訓練用として限定的な配備が行われました。 その後は皮肉な事に、ベトナムでは不要とされたガーランド譲りの“フルサイズ・ライフル”である特徴は、セミオートでの良好な射撃精度と長い射程距離や高い信頼性は再評価を受け、米陸軍では修繕してM21狙撃銃として採用された他、海軍では艦上警備用や“もやい綱”投射用として使用を続けます。 また、その流麗なスタイルは儀仗兵用にも用いられています。 そして近年における地域紛争や対テロ戦争では、M14の威力を必要とした特殊部隊のみならず一般部隊までもが倉庫から引っ張り出して戦果を挙げ、各種近代化改修を施し使用し続けていた事は記憶に新しい所です。 海外へは主力から外れた後、まとまった丁数がイスラエルと台湾に送られたそうです。 本ロットの品はイスラエルからの放出品です。
すらりと伸びたバレルです。 大型のフラッシュ・サプレッサーもかっこいい!
バレル長は約560mmと、FALやGew.3のスタンダード・モデルより少々長いんですね。
イスラエルはM14を速射可能な狙撃銃(今で言うDMR、選抜射手ライフルでしょうか)として用いていました。イスラエルは1956年よりFALを使用していますが、こういった用途においては、M14に分があると判断したのでしょうか。興味深い点です。
ハンド・ガードは後期のガラス繊維混入の耐熱樹脂製です。
初期はガーランドのような木製で放熱が追いつかず煙を上げたので、放熱孔を開けた樹脂製に交換するもこれも耐久性に難有。で、画像の型となりました。
機関部を眺めてみます。 ガーランド直系の血筋が良く判りますね。
精緻なダイヤル調整式のリア・サイト。弾数が半端無い印象の米軍ですが、伝統的な小銃の命中精度への拘りが強く感じられます。
本ロットの品はイスラエルでセミオート限定として運用されていた名残で、セレクター・レバーの代わりに、セレクター・ロックが装着されています。
(尚、入荷は保証致しかねますが、今後M14用のセレクター・スイッチが入荷した際には、本ロットのM14をご購入いただいたお客様に優先的に2万円(税別)にてご提供させていただきます)
これはウインチェスター製ですね。
当初はスプリングフィールド造兵廠での製造のみでしたが、急速な配備の必要性と、全面核戦争時に備えた製造設備分散の観点から、1959年より銃器製造で有名なウインチェスター社とハーリントン&リチャードソン社、航空宇宙分野で急発展を遂げていたTRW社(トンプソン・レイモー・ウールドリッジ社)に製造を委託します。
こちらH&Rことハーリントン&リチャードソン社製の刻印。
削り出しが良く判る機関部左側。マウント・ベースを取り付けるネジ穴が見えます。
鋼鉄製の削り出しレシーバーはどうしても重くなり、コストもかさむ反面、高い剛性があるため、マウント・ベースを介した光学機器の装着に好都合でした。 この点も(あくまで自動小銃転用としてはですが)狙撃銃として有利に働いたようです。
バット・プレート部。 少しでもフルオートを手懐けようと頑張った名残であるフラップ・プレートを装備。
内側のコンパートメント扉の開閉も問題なし。錆やスレも少ないとても良い状態です。
個体によっては米軍のDAS(Defense Acceptance Stamp)や、P(Proof)マークが、しっかりと残っているものもあります。
木部のオリジナルと思われる仕上げがしっかり残るキレイな物。
イスラエルでは自国製樹脂ストックに換装して使用していた例も見られ、オリジナルのストックはあまり使わず保管していたのかも知れません。
最後は在庫の品から親戚筋である、イタリア BM59と、中国ノリンコ社製 M1A と並べての一枚。
ちょっと珍しい並びかも?
現在、東京大阪両店共に、ウインチェスター社製とハーリントン&リチャードソン社製、それぞれ少数のみ在庫中。M14の入荷自体が極めて貴重な上に、どれもとても良いコンディションです。
どうぞ、この機会をお見逃し無く! それでは、今回はこれにて!!
>M14 ライフルはこちら
>M16シリーズはこちら
>イタリアの親戚。ベレッタ BM59シリーズはこちら
>黒のストック。Norinco社製M1A ライフルはこちら
本日のツーポイント情報!!
* 買取りで、無可動実銃コレクション2挺 が東京店に入荷しました。 HPとDetailed Photos(詳細画像)は近日中にアップする予定です。 価格は現時点では決まっておりません、何卒ご了承くださいませ。
・ マドセン M1924 軽機関銃 (ブルガリア軍用) (価格調整中)
・ Kar.98k 小銃(価格調整中)
* シカゴレジメンタルスでは引き続き東京上野本店アルバイト・スタッフを募集中です。 銃やミリタリーに興味のある方、土日勤務可能な方大歓迎です。 詳細につきましては、氏名・年齢・住所・電話番号を明記の上、メールにてお問合せください。
お問合せ先:chicago@regimentals.jp
尚、アルバイト募集の詳細につきましては、Indeedの弊社募集広告にも掲載しておりますので、こちらも併せてご覧ください。