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国内唯一の無可動実銃と古式銃の専門店。
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2017.11.20 Monday

タンタンの方が呼びやすい

こんにちは、プリンターのインク、電動歯ブラシの替えブラシ、ひげ剃りの替え刃…これらの消耗品。 理屈は解っているつもりですが、本体を買い替える方が安くつく事にやっぱり釈然としないキヨミズです・・・安物しか使ってないのがモロバレなのは気にしない!
 


安心して下さい、こちらは一級の品でございます!
ポーランド Kbk wz.1988 タンタル 自動小銃です。
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開発は1980年代初頭、ソ連が採用した5.45x39mm弾薬が近い将来、ワルシャワ条約機構軍の標準小銃弾薬となる事を見越したポーランド国防省は、ラドム造兵廠に開発を指示。 ソ連よりAK-74と5.45x39mmの生産ライセンスを取得すると共に、小口径高速弾薬を使用する新型小銃開発、“Cez”計画としてスタート。

ポーランド独自の設計を盛り込んだいくつかの試作モデルが完成するも、仕様の変更(と、おそらく経済的な問題)により、開発は幾度と無く停止・再開を繰り返しますが、冷戦崩壊、民主化を経た1991年、Karabinek wz. 1988 Tantal (カービン モデル1988 タンタル(新型という意味))省略表記、Kbk wz.1988として制式採用となりました。

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生産時期は1991〜94年のみ。 総生産数は25,000挺程で、全て自国軍向けに配備が行われました。 特に政治的、経済的にも混乱が続いていた時期に新小銃を配備した事は、同国の辿った歴史から来る強い国防意識の表れといえるでしょう。 そして同国は民主化後、NATOへの参加を強く要請した国々の一つでありました。 正式加入を果たす1999年以前より装備の西側化を進め、1997年の5.56x45mmNATO弾を使用するKbk wz.96 Beryl (ベリル)採用を以って更新が行われますが、2005年までタンタルも現役にあったようです。 その後は予備兵器として保管された他、余剰は新生イラク軍等に供給された模様です。

現在、ポーランド軍は、モジュラー・システム、マルチ・キャリバー、コンベンショナル/ブルパップが選択可能な先進的な小銃システム“MSBS”を、新しく採用したと伝えられています。(もちろん設計開発はラドム!余談ついでにMSBSのペットネーム“Grot”はポーランド語では矢じりを意味するそうですが、英語ではポンコツ!何というかシニカルな兵隊ジョークっぽくて実にいいですね)




さて、タンタルです。
見た目はそのストックから、AKS-74の東独版、MPi-AKS-74に似ております。
大型のフラッシュ・ハイダー/マズル・ブレーキも同じかな?と思いきや、
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ライフル・グレネードに対応するため、全長が長くなり、形状も異なっています。
サイト側にガス・シール用のリングが見えますね。 前方上の孔は、グレネード発射時に上方も吹き付け、ガタつきを抑えて命中精度を上げる目的の物。


ハンドガード。 上下共に樹脂製ですが、ご覧のように色味、質感が異なります。
また個体により色味の濃淡がはっきりしております。
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特に興味深い変更点が矢印先にあるココ。
AK系では一般的にリアサイトベースに設けられている、ハンドガードロックレバーがココに移植。(画像は後期型でレバー式。 前期型ではマイナスのネジ式になっております)


リアサイトベースはこの様にすっきり。 使い込まれたAKにハンドガードロックレバーが折れている個体を見かけますので、比較的破損しやすい箇所なのでしょう。 またライフルグレネードの使用を考え、強度向上を図った物かもしれません。
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リアサイトはコンバット・ポジション“S”でレンジは1000mまで。
(ポーランド製銃器に稀に見られる“∴”のシールは何でしょうか?プレデターのサイト、と勝手に呼んでますが…)


表面処理は黒の焼付け塗装。 ポーランド製らしい、綺麗な仕上がりです。006.jpg
面白いのはセレクターレバー。 タンタルでは右側のレバーは、発射/安全の切り替えのみのセフティレバーとなっており、

左側面に発射モードのセレクターレバーが独立して設けられています。
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ポジションは“S”は3点バースト、“P”はセミで“C”がフルオートとなっております。
Sはセミじゃあなかったんか!P〜C間の移動量が大きいのが興味深い。
ポーランドは制限点射の利点をいち早く認識していたようで、同様の機構を持ったKbk AKMLの試作モデルがテストされています。


ラドム造兵廠製造を示す、楕円に11の秘匿マーク。
1994年製なので特に秘匿する必要はないんですけど、冷戦の名残りを感じさせる部分です。
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リコイル・スプリング・ガイド・ロッドの後端でもある、レシーバー・カバー・キャッチボタン。
ライフル・グレネード発射時の強烈な反動によるレシーバー・カバーの外れを防ぐため、上方にスライドしてロックする機構を備えます。

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同様の工夫ははポーランド製AK47であるKbk wz.60にも見られる他、ハンガリーや旧ユーゴ等のライフル・グレネードを使うAKシリーズに装備されています。


ストックは東独AKのMPi-KMS-72から設計をとったとされる、折り畳み式ワイヤーストック。
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ラドムでは独自型のスライドストックや、AKS74のプレス製ストックも試したらしいのですが
操作性やグレネード発射時の耐久性に問題が生じたらしく、東独式折り畳みストックの採用となりました。 資料には単に東独MPi-KMS-72よりのコピーとあります。
このストックの採用に際し、東独と正式な提携があったのかは調べ切れませんでした。
ちなみに、タンタルは固定型ストック・モデルの量産は行われず、この折り畳みストックモデルのみとなっています。
(耐久性はともかく、ライフル・グレネード発射時は痛そうですね…)



折り畳んだ状態。 右側に回転して収納します。
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本個体は後期型なので黒色、プラスティック製30連が付属。
前期型は金属製30連が付属します。


最後に東独MPi-AKS-74と並べての一枚。
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共産ポーランド時代に生まれた最後の制式小銃であるタンタル。
実銃はもとより無可動でも貴重な機種です。
状態はほぼ新品同様の素晴らしい品です。


東京店には前期・後期型共に在庫少、
大阪店は、本ブログで取り上げた後期型の個体が一丁のみとなっております。
在庫ありますうちに、どうぞご検討下さい。 それでは今回はこれにて!

 

 

>Kbk wz.1988 タンタル 自動小銃 前期/後期型 はこちら

>東ドイツ MPi-AKS-74 自動小銃 はこちら


本日のワンポイント情報!!

下取りで、ヨーロッパ各国軍装品コレクションが大阪店に入荷いたしました。

内容は下記のとおりです。

スイス軍 M/41 レンジファインダー (ケース・三脚付)

戦前スイス軍 双眼鏡 (革製ケース付)

戦後ソビエト軍 爆撃機射撃用 小型照準器
大戦中 ドイツ軍 30mm 砲弾 (合法安全処理品)

大戦中 ドイツ軍 20mm 砲弾 (合法安全処理品)

ドイツ 国民突撃隊 腕章 (復刻品)

東ドイツ軍 双眼鏡 (NVA刻印入り)

東ドイツ軍 オーバーコート (大佐肩章付)

カナダ軍 ブローニング・ハイパワー ホルスター

戦前型 チェコスロバキア軍 ヘルメット

戦前型 スウェーデン軍 ヘルメット

M53用 木製バット・ストック

 

上記のうち、ドイツ の腕章、東ドイツ軍の双眼鏡及びオーバーコート、M53用 バット・ストック は東京店へ移動し明日到着予定です。
 

 

順次HPにアップして行きますので、ぜひご期待ください。


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